「リースバック」で消費者トラブル相次ぐ
国土交通省は住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法(宅建業法)の新たなガイドラインを策定し、10月から施行します。持ち家を売った後も、売り主がそのまま住み続けられる「リースバック取引」で消費者トラブルが相次いでいるため、その適正化を図り、高齢者などから安値で不動産を買い取り、転売でもうけようとする「押し買い」の被害を防止することが目的です。
「押し売り」ならぬ「押し買い」
「押し売り」ならぬ「押し買い」です。悪質な勧誘で強引に「買わせる」のではなく、強引に「売らせる」商法です。まずは「押し売り」。これは昭和の中ごろに横行し、その後、8日以内であれば無条件で解約できる「クーリング・オフ」や、一度断った相手への再勧誘の禁止の規定など、消費者を守る法律や制度が整備されました。中学校でも学習する内容です。
一方、「押し買い」は古くて新しい悪徳商法です。平安時代ごろから存在し、鎌倉時代では禁止令も出たそうです。近年では、2010年以降に「押し買い」の被害が爆発的に増加したため、2012年8月に特定商取引法の改正で「訪問購入」に関する規制が導入されました。「クーリングオフ」も適用されましたが、対象は貴金属や衣料品などに限られました。
「リースバック」とは
「リーズバック」は不動産業者などに家を売り、その後で家賃を払って家に住み続けるというものです。つまり、自宅を手放す売買契約と、その家を借りる賃貸借契約の両方を結びます。対象年齢の制限はなくお金の使い道も自由です。家を持ち続け、家を担保に銀行などからお金を借りる「リバースモーゲージ」と同様、高齢者らが自宅に住み続けながらお金を得るしくみのひとつです。
「終活のお手伝いをします」にご用心
近年、高齢者がマイホームなどを安価で買いたたかれる「押し買い」の被害が増えています。契約後に解除を申し出ても、自宅の売却には一定期間内ならば契約を取り消せるクーリングオフが適用されないため、高額な違約金の支払いを余儀なくされるケースもあります。悪徳業者による法制度の隙間や高齢者の孤立につけ込んだ卑劣な行為です。背景には都市部の不動産価格の高騰があります。
「押し買い」の被害はマイホームを安価で買いたたかれるだけではありません。多くの場合、悪徳業者は「押し買い」と「リースバック」をセットで契約を迫ります。「押し買い」は自宅の売買契約、「リースバック」はその自宅の賃貸借契約です。「終活のお手伝いをします。自宅を売却しましょう。売却しても家賃を払って住み続けることができます」は悪徳業者の常套セールストークです。
「押し買い」の問題点は?
悪徳業者の言うことは嘘ばかりではありません。理にもかなっている部分もあります。トラブルになるのは、契約の進め方やその内容に問題があるからです。問題点を整理してみましょう。
- 突然訪問する、不安をあおる、長時間居座る、断ってもまた来るなどの悪質な勧誘手法。認知機能の低下につけ込まれ、「押し買い」のあとに「押し売り」を受けた事例もあります
- 不利益になる重要な事実を故意に告げない「不利益事実の不告知」
- 買取価格の根拠を示さず、安く買いたたかれる。市価の半値や3分の1の事例も少なくありません
- 「リースバック」の家賃が相場より高い。家賃が払えなくなれば、結局出ていかざるを得ません
- 「リースバック」の賃貸借契約が「定期借家契約」になっている。契約が更新されることはないと考えた方がいいでしょう。契約期間満了で退去を迫られます
特に要注意は「定期借家契約」です。これは5月に公開された、映画『正直不動産』でも取り上げられていました。「再契約型定期借家契約」というものもありますが、法的に再契約が保障されているわけではありません。また、更新ではなく再契約なので、同じ条件での継続入居を保証されるわけでもありません。家賃が見直されたり、再契約にかかる費用が発生することもあります。
国交省がガイドライン策定
今回の国交省による「住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法ガイドラインの策定」は、「リースバック取引」の適正化や「押し買い」の防止を図るため、宅建業法の解釈を次のように明確化しました。
- 宅建業者が買主又は媒介等するリースバック取引における売買については、宅建業法上、信義誠実の原則、契約事項に関する書面の交付、業務に関する禁止事項(事実不告知の禁止、拒絶後の勧誘継続、長時間勧誘等の「押し買い」に当たる不適正な勧誘の禁止等)に関する規定が適用され、宅建業者は遵守義務を負うことを明確化
- 勧誘をするに際し、相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなる事項について、故意に事実を告げない行為(事実不告知)の禁止について、リースバック取引においては、「売買」に加え「賃貸借」の内容も相手方等の判断に重大な影響を及ぼす事項に該当する旨を明確化
ちょっと難しいですね。2点目の「事実不告知の禁止」については、多くのトラブルの原因となっている次のようなことについて、事前にしっかり契約内容を説明しなさい、説明しないのはダメですよということです。
- 売買契約においては、「買戻し特約に関すること」「契約解除や違約金に関すること」などについてです。「買戻し特約がなく断られた」「解約時に高額な違約金を請求された」などのトラブルが多くありました
- 賃貸借契約においては、「家賃の額や支払い方法」「契約期間・更新に関すること」「修繕費用の負担区分」などについてです。「家賃が高額で資金不足となった」「定期借家契約で退去を迫られた」「修繕費が売主負担となっていた」などのトラブルの原因となっていました
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/002013678.pdf
最後に、「リースバック」は絶対悪ではありません。「リースバック」の仕組みをしっかり理解できて、自宅を売却後に家賃を払って住む期間が限られている人にはいいかもです。例えば、一定期間後に高齢者施設へ住み替える予定で、入居一時金を確保したい人などです。余命宣告を受けての家じまいに活用した「おひとりさま」の例もありました。
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今回のガイドライン策定は一歩前進だと思います。しかし、日弁連が2025年9月に国交大臣に提出した「不動産押し買い被害の防止・解決に向けて宅地建物取引業法の改正を求める意見書」には、宅地建物取引業者が買主となる売買についてもクーリング・オフ制度を導入することや、売買契約でも取引対象となっている不動産の価額又は評価額については根拠を明示した上で説明する義務を定めることといった内容も含まれていました。
先の国会では国旗損壊処罰法が成立しましたが、立法事実が不明などと言われる法案を成立させるより、現に困っている人がたくさんいる、明らかに立法事実がある法案を優先して成立させて欲しいと思います。
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