マイホームは「残クレ」で買える
そもそも「残クレ」とは?
「残クレ」とは、残価設定型クレジットの略です。自動車やスマートフォンの購入では短期での買い替えを前提に利用が進んでいます。私は利用したことありませんが、例えば500万円の車を購入する際、5年後に200万円の価値が残ると見込み、残りの300万円分をローンで返済する仕組みです。返済後は、①車を返却する、②一括または分割で残価を支払い乗り続ける、といったオプションがあります。
「残クレ」のメリット、デメリットは?
メリットは、①月々の返済額を抑えられること、②ライフスタイルに合わせて新車(新商品)に乗り換えやすいことなどです。残クレでは車両価格から残価を差し引いた金額を返済するため、月々の返済額を抑えることができます。また、結婚や出産、転勤など環境の変化によって自動車の利用方法が3~5年で変わる可能性が高い場合も残クレのメリットを活かせるでしょう。
デメリットは、①金利負担で総支払額が割高になること、②返却時に追加費用が発生することなどです。「残クレ」は残価分の元金返済を据え置くことで毎月の返済額を抑えられますが、残価分にも金利が発生するので、通常のローンより金利を多く支払うことになります。また、決められた走行距離を超過したり傷が一定以上あったりすれば、返却時に追加費用が発生します。
住宅「残クレ」は戸建て向けの制度
住宅「残クレ」(残価設定型住宅ローン)でも、メリットやデメリットは車と同様です。返済後のオプションも基本的には一緒ですが、具体的には、①家を買い取ってもらう、②リバースモーゲージ型住宅ローンに切り替え、利息のみ支払って住み続けるの二択です。リバースモーゲージは「元金が減らない住宅ローン」とも言われ、その仕組みをきちんと理解する必要があります。
車と住宅の大きな違いは契約期間の長さと価格です。車は3~5年が一般的ですが、住宅は最長30年以上の長期契約です。今は物価も不動産価格も上昇トレンドですが、20~30年後は分かりません。将来、物件を売却して一括返済する際、売れる価格が設定残価を大幅に下回る可能性もあります。つまり、住宅「残クレ」は車に比べ、価格下落リスクが格段に大きいということです。
しかし、安心してください。住宅「残クレ」では、この価格下落リスクは貸し手である金融機関が担う構造となっています。そのため、融資の対象は資産価値が落ちにくい物件に限られます。具体的には、公的機関から長期間、維持管理ができる体制を整えていると認められた事業者が施工する「認定長期優良住宅」のみです。現時点では、住宅「残クレ」は戸建て向けの制度ということになります。
マンションでも利用可能とする商品も一部ありますが、ほとんどの場合、マンションは対象外です。理由は戸建てと異なり、一人の意思で建物全体の維持管理や資産価値をコントロールできないため、将来の正確な資産価値(残価)を見極めづらいからです。また、取り扱いができる金融機関も、現状では楽天銀行や三菱UFJ銀行、日本住宅ローンなどの数社に限られています。
国の後押しは不発?
東京都心部のマンション価格が平均で1億円を超え、住宅価格の高騰が社会問題となっています。「残クレ」を活用すれば月々の支払額を抑えられると、国交省は2025年度の補正予算で約14億円を計上し、支援策を3月に始めました。しかし、この施策は今のところ不発に終わっているようです。原因は金融機関が貸出しに積極的じゃないからとの指摘がありますが…
住宅「残クレ」利用者が住宅を売却する際、売却価格が設定残価を下回ると金融機関に損失が発生します。そこで、国は金融機関の融資を促すため、住宅金融支援機構において、その損失を補填する金融機関向けの保険「特定残価設定ローン保険」を提供しました。金融機関が担う価格下落リスクを、住宅金融支援機構の住宅融資保険でリスクヘッジを図ったのです。
しかし、仕組みが複雑だったり、先を見据えて住宅の残存価値を評価する難しさもあって、金融機関は概ね様子見といった状況のようです。利用者の方でも、通常の住宅ローンに比べ元金の減りが遅いため、変動金利の場合、金利上昇の影響をもろに受けやすいといった事情もあります。また、住宅金融支援機構の保険料は、結局は金利に上乗せされ、利用者が負担することになるでしょう。
マンションなら「期日一括返済併用型」で
「期日一括返済併用型住宅ローン」とは?
「期日一括返済併用型」は、2026年6月にドコモSMTBネット銀行(旧 住信SBIネット銀行)が取り扱い始めた新しい住宅ローンです。担保評価額の50%に相当する元金をあらかじめ定めた期日に一括返済(それまでは利息のみの支払い)し、残りの元金は通常のローンで返済します。元金の半分程度の返済を先送りすることで、それまでの月々の負担を軽減するしくみです。
住宅「残クレ」とほぼ同じ?
「期日一括返済併用型」が発表されると、不動産界隈から「残クレ型とどこが違うの?」との声が上がります。確かによく似ています。基本構造は同じです。元金を返済する通常ローンと、元金の返済を先送りしてそれまでは利息のみを支払うローンのハイブリット型です。どちらも最終回の一括返済分(設定残価)や元金の一部を据え置くことで、それまでの月々の負担を軽減するものです。
将来の売却や住み替えを前提にしている人や現在の住宅の相続人がいない人などに向いていることや、融資対象が資産価値が落ちにくい物件に限られること、取扱金融機関が少ないことも同じです。そして、価格下落リスクが大きいことや通常の住宅ローンに比べ元金の減りが遅いため、変動金利の場合、金利上昇の影響をもろに受けやすいというデメリットも共通しています。
対象は23区、横浜・川崎、大阪の億ションのみ
もちろん違いもあります。大きな違いは2つです。まずは融資対象です。住宅「残クレ」は戸建て向けの制度でしたが、「期日一括返済併用型」は東京23区、横浜市、川崎市、大阪市の担保評価額が1億円以上の新築・中古マンションが対象です。将来の正確な資産価値(残価)を見極めづらいマンションでも、このエリアであれば担保評価額の50%分はあると踏んいるのでしょう。
住宅「残クレ」と「期日一括返済併用型」の決定的な違い
二者の決定的な違いは価格下落リスクのリスクヘッジにあります。「残クレ」の最大の特徴は、「将来の価値(残価)」を前提に設計されていることです。そして、住宅「残クレ」では、その「将来の価値」の保証は金融機関が担い、さらに公的機関の保険が保障してくれます。つまり、価格下落のリスクは金融機関と公的機関で二重にリスクヘッジが図られています。
しかし、「期日一括返済併用型」には将来の価格の保証がありません。「残クレ」では、一定の条件下であれば担保を返却することで清算が可能です。しかし、「期日一括返済併用型」は購入した不動産の価格が下落しようと、据え置いた元金は返済しなければなりません。つまり、価格下落リスクは全て買主が追うことになります。「残価保証がない残クレ」とも言える構造です。
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このように見ていくと、住宅「残クレ」は長期優良住宅の普及を図る国の政策と深く結びついていることが分かります。一方、「期日一括返済併用型」は民間金融機関独自の商品で、タワマンなどの高額物件を購入する投資家・富裕層をターゲットにしています。この二者は構造こそ酷似していますが、性格はかなり異なると考えた方がいいでしょう。
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