実家じまい5-実家の贈与登記やってみた(後編)

実家じまい
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贈与登記とは、贈与を理由に土地建物の所有権移転(所有権の名義変更)を登記することで、実家を管轄する法務局で手続きします。スムーズにいけば1週間でできることもありますが、初めてならスムーズにいくはずがありません。ダメもとと思って取り掛かってみましょう。なお、平日の日中に時間が作れない方は最初から司法書士さんにお願いした方が無難です。

Step 1 必要書類を確認する

法務局へ提出する書類は「登記申請書」のほか、「登記識別情報(または登記済証=権利証)」、「登記原因証明情報(または贈与契約書)」、「代理権限証明情報(=委任状)」、「印鑑証明書」、「住所証明情報(=住民票)」などですが、書類を作成するために「登記事項証明書」や「固定資産税課税明細書(以下「課税明細書」という)」も必要になります。

「登記事項証明書」については次項で詳述します。「課税明細書」は毎年市町村から郵送される「固定資産税 納税通知書」に添付されています。最新年度のものが必要です。見つからないときは、市町村役場で「固定資産税評価証明書」や「名寄なよせ帳(固定資産税課税台帳)」を取得しましょう。これらでも固定資産税評価額を確認できるので大丈夫です。

なお、「名寄帳」は所有している不動産を一覧で確認することができるため、すべての不動産の贈与登記を一括して行う場合は特におすすめです(もちろん、相続が発生し被相続人(亡くなった人)の不動産を調査するときにも)。また、「課税明細書」に記載されていない不動産(一定の評価額を下回るため非課税)の不動産を見つけることもできます。

桜町不動産
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今回のケースでは、隣家の所有者と共有名義(持分2分の1)の私道が「課税明細書」に記載されていませんでした。一定の評価額を下回るために非課税となっていたからです。逆に「課税明細書」に記載されていた家屋(倉庫)のひとつは、実は登記されていませんでした。すべての不動産の贈与登記を一括して行う場合は、やはり「名寄帳」を取得して確認することをおすすめします!

Step 2 登記事項証明書を取得する

「登記事項証明書」はその時点で法務局に保管されている登記記録の全部又は一部を証明するものです。登記簿が紙媒体で管理されていた時代には「登記簿謄本」と呼ばれていました。正しい所有者を確認するための「登記識別情報(または登記済証=権利証)」とは異なり、登記内容の写しや履歴書みたいなもので、誰でも取ることができます。

「登記事項証明書」は、法務局の窓口、郵送、オンライン(かんたん証明書請求)で請求でき、それぞれの方法で受け取りが可能ですが、慣れていない人は法務局で取ることをおすすめします。窓口で登記事項証明書の交付を請求する場合の手数料は1通(1筆の土地又は1個の建物)あたり600円です(令和7年10月現在)。とりあえず足を運びましょう。分からなければ、職員の方に聞けば親切に教えてくれます。

法務局に足を運べば、ついでに「贈与登記を申請される方へ」などと題された、説明や記載例、提出前のチェックリスト、様式が綴じてあるものを手に入れましょう。どこの法務局でも同じようなものが置いてあると思います。見当たらなければ職員の方に聞いてみましょう。これは自分で贈与登記するときの必携です!

桜町不動産
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「登記事項証明書」を取得するには地番で請求します。地番と住所(住居表示番号)が一致していれば問題ありませんが、特に都市部では地番と住所が違うため、住所で「登記事項証明書」を請求しても取得できません。地番は法務局に備え付けのブルーマップ(住宅地図に青字で地番が振られた地図)で調べることができます。

「登記情報証明書」は、大きく「表題部」と「権利部(甲区・乙区)」に分かれています。表題部では不動産(土地や建物)の物理的な情報(所在、地番、種類、構造、床面積など)が確認でき、権利部(甲区)では所有権の登記内容(誰が所有しているか)が、乙区では抵当権などの所有権以外の権利が時系列順に記載されています。

まずチェックすべきは、「権利部(甲区)」にある所有者の住所と氏名が引っ越し前の住所や旧姓になっていないかの確認です。もし、現在の住所や氏名になっていなかったら、速やかに下のリンクを参照して変更登記を行いましょう。

次に、「登記事項証明書」と「課税明細書」がそろったところで、この2つを見比べてみましょう。注目して欲しいのは「地目」(土地のみ)です。「登記事項証明書」では表題部の②地目の欄に記載してあります。これがいわゆる「登記地目」です。ところが、「課税明細書」には「登記地目」のほかに「課税地目」の記載があります。

「課税地目」は、固定資産税や相続税を算出する際の根拠とされるもので、土地の現況及びその利用目的によって市区町村や税務署が判定します。だから、土地の現況が変われば「課税地目」も変更されます。一方、「登記地目」は地目変更登記をしない限り変更されません。つまり、「登記地目」は現況と異なることが大いにあり得るということです!

桜町不動産
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今回のケースでは、実家も祖父母宅も課税地目は「宅地」なのに、登記地目は「畑」でした。田舎あるあるです。登記地目が「田」や「畑」の農地や採草放牧地の場合、勝手に贈与も売買もできません。このことについては「Step 5-1」で詳述します。また、家屋を増築すると、市町村の現地調査で課税床面積も増えます。そうなると「登記事項証明書」の床面積と「課税明細書」の課税床面積は当然違ってきます。

Step 3 登記原因証明情報を作成する

贈与時に「贈与契約書」を作成していなければ、改めて作成する必要はありません。代わりに「登記原因証明情報」を作成します。また、Step3~6は順番通りに進めなくても大丈夫です。まずは、法務局のサイトから「2-3 所有権移転登記申請書(贈与)」の記載例(Word)をダウンロードして、これを書き換えていきましょう。「贈与契約書」もありますが無視して構いません。

「登記原因証明情報」を記載例にならって作成しましょう。まずは「(1)当事者」の欄です。「権利者」とは登記手続きにより直接的な利益を受ける人、「義務者」とは登記により直接的な不利益を受ける人です。ここでは、「権利者」は不動産をもらう人(=受贈者)、「義務者」は不動産をあげる人(=贈与者)となります。

次に「(2)不動産の表示」の欄です。「登記事項証明書」を見ながら慎重に書きましょう。なお、地積(土地の面積)の表示における小数点以下の扱いは、土地の地目によって異なります。「宅地」や「鉱泉地」では小数点以下第2位まで表示されますが、「雑種地」「田」「畑」「公衆用道路」などでは、原則として小数点以下は切り捨てられ整数で表示されます。

「2 登記の原因となる事実又は法律行為」の欄で、不動産を贈与する意思を表示および受諾した日付は、過去の日付にしておけば大丈夫です。なお、「受贈者」と「贈与者」のハンコは実印じゃなくても構いません。また、複数ページになるときは契印が必要ですが、法務局に提出する際に要領を教えてもらって、その場でやればいいと思います。申請者のハンコを持って行きましょう。

桜町不動産
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「登記申請書」「登記原因証明情報」「代理権限証明情報(=委任状)」を作成していると、これでいいのかと不安になることがたくさん出てきます。そんなときは法務局の登記手続案内(無料)を利用しましょう。平日の日中のみで1回20分の予約制です。空いていれば、当日でも予約できます。案内は電話かウェブ会議が原則のようですが、私の実家を管轄する地方法務局の支局では対面で案内してくれました。

Step 4 そのほかの添付情報を揃える

ここでのそのほかの添付情報とは「登記識別情報(又は登記済証)」、「印鑑証明書」、「住所証明情報」、「固定資産評価証明書」などです。これらに加え、住所や氏名に変更がある場合はその登記のために住民票の写しや戸籍謄抄本、戸籍の附票などが、農地を贈与する場合は農地法の許可書(または届出受理通知書)が必要になります。

「登記識別情報」は目隠しシールや折り込み式で隠された登記識別情報(12桁の英数字とQRコードで構成される秘密の符号)が見えるようにしてコピーをとります。コピー(原本不要)を封筒に入れ、封筒に「登記識別情報在中」の旨、権利者・義務者の氏名及び登記の目的を明記して封をせずに提出します。登記済証の場合は、その原本を添付します。

「印鑑証明書」は贈与者(あげる人)のものです。「住所証明情報」とはいわゆる住民票の写し(マイナンバーの記載なし)で、受贈者(もらう人)のものです。これらはその証明書の原本を添付する必要があります。また、「固定資産評価証明書」は正式な添付情報ではありませんが、登録免許税の算出上、添付を求められます。最新年度のものであれば「課税明細書」の写しで代用できます(法務局によってはできない場合も)。

桜町不動産
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「登記識別情報」は初期が目隠しシール、2015年から折り込み式で大切な情報を隠しています。改良されたのは目隠しシールがきれいにはがれず符号が分からなくなるトラブルが続出したためです。実は、私もそのトラブルに見舞われました。はがすのを断念し、再作成してもらおうと法務局に足を運んだところ、法務局の職員の方が結構な時間をかけてはがしてくれました。有難うございました!

Step 5 登記申請書を作成する

Step3でダウンロードした贈与登記の記載例は、受贈者(贈与を受ける側)が「申請人兼義務者代理人」になっています。だから、例にならって書き換えれば大丈夫です。ちなみに司法書士に依頼すると、「申請人兼義務者代理人」は司法書士名、権利者(受贈者)の氏名の末尾には認印、義務者(贈与者)の氏名の末尾には印鑑証明書と同じ印(実印)が必要になります。

間違いやすいのが、「課税価格」と「登録免許税」です。「課税価格」は「固定資産評価証明書」(「課税明細書」でも可)で「価格」や「評価額」と書かれている価格で、「課税標準額」ではありません。なお、「固定資産評価証明書」等に「評価額」の記載がない場合は市町村役場に価格を出してもらう必要があります。登録免許税の計算については下のページをご参照ください。

「課税価格」は1000円(千円)未満の端数は切り捨てます。1000円未満である場合は1000円になります。「登録免許税」は計算した額に100円(百円)未満の端数があるときはこれを切り捨て、計算した額が1000円未満であるときは1000円とします。ここは特に気をつけましょう。なお、計算ミス等で収入印紙に過不足があれば、申請後に登記官から連絡があります。

登録免許税分の収入印紙は別の用紙に貼り付け(割印や消印はしない)、申請書と一括して綴じ(左側2箇所をホッチキスで留める)、申請人またはその代理人がつづり目に契印を押します。契印の押し方は記載例では分かりにくいので、法務局に提出する際に要領を教えてもらって、その場でやればいいと思います。

Step 5-1 農地は「4条許可」や「地目変更」登記が必要、「非農地証明書」でも!?

現況が宅地でも地目が「田」や「畑」の農地を贈与するには、一般には下の流れでの手続きが必要です。

  1. 市町村農業委員会から農地法第4条許可(農地転用の許可)を受ける
  2. 「地目変更」の登記を行う
  3. 「所有権移転」(贈与)の登記を行う

農業委員会から「4条許可」を受けていても、「地目変更」の登記を行わなかったため、登記地目が農地のままになっていることが多いのが実情です。まずは「4条許可」を受けていないか確認しましょう。許可書が見つからない場合、農業委員会から「現況証明書」(許可どおりに転用されていることの証明)を発行してもらいましょう(過去に許可を受けていることが前提です)。

「地目変更」については、下のリンクから様式や記載例をダウンロードできます。添付情報として、4条許可の「許可書」または「現況証明書」など、代理申請の場合は「代理権限証明情報(=委任状)」も必要になります。なお、「地目変更」は登録免許税はかかりません。

「4条許可」を受けなくても、「非農地証明書(非農地通知書)」で地目変更の登記をすることもできるようです。下のリンクをご参照ください。なお、「現況証明書」や「非農地証明書(非農地通知書)」は法的根拠に基づくものではありません。一種の行政サービスとして行われているものなので、市町村によって事情が異なります。市町村農業委員会及び管轄の法務局に相談されることをおすすめします。

桜町不動産
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「地目の変更」の登記について、「土地の表示」の表中の「登記原因及びその日付」は、家屋が新築されて現況が農地ではなくなった日付けです。通常はその家屋の「登記事項証明書」の表題部に「昭和◯年◯月◯日新築」などと記載されている日付でOKです。ところが、今回は家屋が登記されていないケースがありました。「課税明細書」に「昭和50年建築」との記載があったので、「登記原因及びその日付」は「昭和50年月日不詳」としました。

Step 6 代理権限証明情報(委任状)を作成する

委任状の作成は、ダウンロードした「2-3 所有権移転登記申請書(贈与)」の記載例(Word)を書き換えていけば特に難しいことはありません。委任者の印は印鑑証明書と同じ印(実印)を押しましょう。なお、複数ページになるときはやはり契印が必要です。

Step 7 管轄の法務局に提出する

まずは管轄の法務局を確認しましょう。支局や出張所もあるので、下のリンクから探しましょう。

申請は、法務局に持って行くほか、郵送やオンライン(インターネットを利用して電子申請)も可能です。しかし、最初は法務局に足を運ぶことをおすすめします。窓口で書類に不備がないか確認してもらえるので、ハンコ漏れなどはその場で修正することもできます。なお、郵送の場合はレターパックプラス(赤)か一般書留を使用し、「不動産登記申請書在中」と記載します。

申請が受け付けられると、受付日と受付番号が書かれたペーパーが交付され、登記識別情報受け取りの際には持って来るように言われます。それで提出は完了ですが、その後、登記官が申請書類に不備がないか、登記が法律の要件を満たしているかを審査し、登録免許税の計算ミスや印紙の過不足、添付情報の不足などがあると登記官から連絡があり、修正することになります。

桜町不動産
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最初からパーフェクトはまずありません。何回も法務局に通うつもりで提出しましょう。司法書士の方でも一発通過とは限らないようです。不備があれば登記官から電話がかかってきます。受付時に交付されるペーパーに登記官の電話番号が書いてあるので、不審な電話と間違えないように番号を登録しておきましょう。ちなみに、私も添付情報と印紙の追加がありましたが、幸いにも郵送で済みました。

Step 8 登記識別情報を受け取る

審査を通過すれば、法務局から「【法務局】申出手続完了のお知らせ」等のタイトルでメールが届いたり、電話がかかってきたりします。受付時に交付されたペーパーと申請時に使用した印鑑、身分証明書(免許証など)を持って、法務局に受け取りに行きましょう。「登記完了証」と「登記識別情報」が交付されます。行ったついでに「登記事項証明書」をとって、一緒に保管しておくとよいでしょう。

なお、法務局に足を運ぶのが難しいときは、申請時に返信用封筒(返信先を記載し、返信用料金分の切手を貼った、申請書類が入る程度の大きさのもの、レターパックは不可)を提出します。なお、返信用料金(切手)は一般料金+一般書留の加算料金+本人限定受取郵便料金です。登記申請を郵送で行うときも返信用封筒を同封すれば、「登記識別情報」を郵送で受け取ることができます。

桜町不動産
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今回はイレギュラーなことが多かったため時間がかかりましたが、その分多くの学びもありました。皆さまにお役立ていただけたら幸いです。なお、登記申請を「業(=仕事)」として行えるのは司法書士と土地家屋調査士だけです。所有権の移転や抵当権の設定など、不動産の権利に関する登記の申請手続は司法書士、建物を新築する際の表題登記や土地の分筆など、不動産の表示に関する登記の申請手続は土地家屋調査士です。私たち宅地建物取引士(宅建士)は登記の申請手続を代理して行うことはできません。ご了承ください。


最後までご覧いただき有難うございました。宮崎市・高千穂町の不動産のご相談は桜町不動産へ