実家じまい3-「おひとりさま」の見事すぎる終活

実家じまい
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「ひとりでしにたい」という物騒なタイトルのドラマがNHKで放送中です。聞けば、文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した漫画が原作だとか。綾瀬はるかさん演じる独身の主人公が伯母の「孤独死」をきっかけに「終活」を始めるお話です。

「30代・40代からの終活のすゝめ」とも言えるこの漫画(ドラマ)。「孤独死」や「終活」は、親ではなく自分ごとだと思い知らされます。そして、少し前に新聞で読んだある「おひとりさま」の見事すぎる終活のことを思い出しました。次のような内容です。

大分県竹田市の弁護士のもとに1通のメールが届きます。送り主は熊本にいた高3のときの担任の先生。「遺言の作成や死後の後始末って、誰に頼んだらいいの? 熊本で誰か引き受けてくれる人はいるかな?」

メールを送ってきた時は66歳で、退職して1年半ほどしか経っていません。
「さすがにまだ終活は早いでしょ」と、とりあえず出向いて話を聞くと、末期の胆管がんで余命1年、治療はせずに痛みに耐えられなくなったら緩和ケア病棟に入ることまでと決めていると告げられます。

先生には夫や子ども、両親や兄弟姉妹もいません。死後、周囲に迷惑がかからないように段取りをつけ、遺産は寄付を検討しているそうです。熊本と竹田では距離がありましたが、その2日後、教え子の弁護士は「俺がやりますよ」とメールしました。

弁護士がまず取りかかったのは、本当に相続人がいないかの戸籍確認。そして、遺産がどれくらいあるのかを調べました。額が大きかったのは預金と、住んでいるマンションでしたが、不動産を寄付することは難しいので、マンションを現金化する必要がありました。

弁護士は「リースバック」という方法を提案します。リースバックは自宅を売却し、その後賃貸契約を結んで住み続ける方法ですが、売却価格が相場より安くなったり、想定以上に長生きすればそのうち家賃が払えなくなったりと、 いつまでも借りられるとは限らないといったディメリットもあります。

しかし、このケースではベストな選択でしょう。そうして算定された遺産の額は約9千万円。そして、その使い道は、すでに決まっていました。「全額を熊本市動植物園の管理運営費に充ててほしい」
 
弁護士は遺産を他の用途に使われないよう、遺言書に「付言事項」を加えることを提案し、完成した遺言書には、国語教師だった先生が考えた文章が記されます。

私が遺贈する財産は、全額を熊本市動植物園の管理運営費に充てていただくよう希望します。
 動植物園は、子どもたちが、動・植物特有の動きや色彩、匂いを体験して、可愛く思ったり、不思議がったりしながら楽しく生態を観察し、生き物に興味を持つ場になっています。
 令和11年(2029年)には、開園100周年を迎えます。
 私からの遺贈が、末永く、多くの人々から愛され続ける動植物園となるために、魅力ある施設整備や園の運営を進めていく一助となれば幸甚です。

ついに先生が緩和ケア病棟に入ることになりました。この時、病室に持ち込んだ荷物は段ボール2~3箱。その他については、すべて自身で処分したといいます。通っていたフィットネスクラブや陶芸教室の契約から、クレジットカードに至るまで解約していました。

弁護士が想定していた仕事のほとんどを、先生は自ら済ませていました。
その後、弁護士は週1回の頻度で、熊本の病院へ見舞いに行きます。車で片道2時間半かけて到着すると、毎回のように「小さい子どもがいるんだから早く帰りなさい」と言われたそうです。

そして、最後に会ってから3日後、病院から永眠の知らせが届きます。「寄付の手続きが完了するまで、教え子や周囲の人に私が死んだことを伝えないように」先生からは、そう厳命されていたので、通夜や葬儀に参列したのは弁護士と闘病を知っていたごく一部の人だけでした。

税金や年金など死後の手続きを済ませると、弁護士としての仕事は終わりましたが、まだ教え子としての使命が残されていました。それは、先生の死を、そして生き様を、教え子や世間に知らせることでした。

寄付について熊本市に相談したところ、贈呈式を開いてくれることに。地元のテレビや新聞の記者が集まる中、弁護士が市長に目録を手渡しました。寄付した額は9106万646円でした。

その様子がネット記事として配信されると、教え子とみられる人のコメントが次々と寄せられ、それにはそれぞれの思い出が書き込まれていました。「人生を全うするとはどういうことかを、元教え子たち、世間の人たちに自分の行動で見せてくださったのだと思いました」などなど。

「先生が残した最後の教えは何だったのか」の問いに、「自分を貫く、ぶれない、潔く生きる……。いろんな言葉が浮かぶけれど、なかなかうまく表現できない。ただ、自分にはまねできない、すごいものを見せてもらった」 教え子の弁護士はそう答えたそうです。


冒頭の写真は熊本市動植物園のウェブサイトから転載しました。サイトの開園100周年記念サポーター「遺贈寄附について」の欄で先生のお名前が紹介されています。

桜町不動産
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先日、相続に関する研修に参加したら、NPO法人作成の「家族も安心 「自分」の引継ぎノート」なるものをいただきました。この先生の真似はできそうにありませんが、私もぼちぼち書いていくことにします。

次回は、約2カ月かかった、私の実家の所有権の移転登記(贈与)の顛末についてご紹介する予定です。


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