ドラマ「正直不動産で学ぶ」13-本当にタワマンでいいの?

「正直不動産」で学ぶ
「正直不動産」で学ぶ

映画「正直不動産」が2026年5月15日公開予定です。ドラマ版のスタッフが再集結し、監督は川村泰祐、脚本は根本ノンジのコンビが担当。映画の公開に先駆け、NHKではドラマ「正直不動産」シーズン1を一挙再放送中です!

これまで、2022年のドラマ「正直不動産」シーズン1より、ペアローンや事故物件、リバースモーゲージ、地面師など、さまざまなテーマについて、12回シリーズで解説しました。引き続き、2024年1月から放送された『正直不動産2』を題材に、不動産取引の際に気を付けたいトラブルや知ってお得な情報をお届けします。どうぞお付き合いください。

第1話のキーワードは、口八丁で売り上げナンバーワンを誇っていたときの永瀬も住んでいたタワーマンション、「タワマン」です。タワマンの購入を希望する歯科医の夫と妻、息子の家族が登坂不動産を訪ねてきました。息子が名門私立小学校に編入するのを機に、タワマンに住み替えたいと言います。妻は少し迷っているようですが…

「タワマンを愛し、タワマンに愛された男」永瀬は、そのメリットを声高に語るかと思いきや、何とタワマンのデメリットを語り始めます。

通常のマンションより柱や梁がより太くなるので同じ70㎡でも有効面積は小さくなる
●朝はエレベーターが大渋滞する
●高層階では景観と安全の両面からベランダに洗濯物が干せない場合もある
●耐震性の問題も心配
●戸数が膨大で人間関係が複雑になりトラブルが起きやすい
●想定していた修繕積立金では足りず100万円超えの追加徴収も

デメリットを聞いて顔を曇らせる夫妻に、永瀬は今度はそれを上回るメリットを強調します。

●毎日が高級ホテルにいる感覚で、まさに夢の空間。日当たりはよく、夜景もロマンティック
●上層階ほど虫が少なく、タワマンによっては24時間ゴミが出せる
●コンシェルジュが常駐しセキュリティも完璧
●展望ラウンジやパーティールーム、フィットネスやスパ、サウナ、1階には24時間営業のスーパーも
●節税対策になるのはもちろん、値崩れがしにくい

これらの説明を聞き、夫妻は喜んでタワマンの購入を決めます。最初にデメリットをあげ、次にそれを上回るメリットをあげて顧客の購買意欲をそそるという、永瀬の営業テクニックにまんまと乗せられてしまいました。このあと、このお客様をミネルヴァ不動産に横取りされたり、結局はタワマンをやめたりと、ドラマは二転三転しますが…

さて、「タワマン」です。私はタワマンをおすすめしません。第1の理由は災害時の脆弱性です。2025年11月に香港の高層マンションで発生した火災では、8棟の31階建てマンションのうち7棟に延焼し、168人が死亡しました。高層階からの階段での脱出は高齢者にとっては至難の業です。また、はしご車の放水は上層階までは届いていないようでした。

私はタワマンに住んだことはありませんが、ハワイで高層ホテルに泊まったときに火災にあったことがあります。幸いボヤで済みましたが、火災報知機が鳴り、屋外に避難しなければなりません。安いツアーだったので私たちが泊まっていたのは20数階の部屋。子どもを連れて階段を降り、何とか外に避難しました。

もう大丈夫ということで、階段を上って部屋に戻ります。やっとの思いで宿泊階にたどり着こうかというところで、若い夫婦と未就学児2人が階段に座っていました。事情を聴くと、高層階の部屋から子どもを連れてここまで下りてきたが、子どもが限界で座っていたと言います。これがボヤじゃなかったらと思うとゾッとしました。

政府の地震調査委員会によれば、南関東でマグニチュード7クラスの地震発生確率は今後30年以内で70%程度とされています。東日本大震災で最長で3日間エレベーターが動かなかった事例がありましたが、震度7が来れば1~2週間放置される可能性は十分にあるでしょう。地上40階に住む場合、配給の水を得るために1階まで降りるには約800段の階段を往復しなければなりません。

2025年3月のミャンマー地震の際、震源から1000キロも離れたバンコクでビルが倒壊しました。原因は長周期地震動です。タワマンは最新の耐震・免震構造で倒壊はしない計算ですが、長周期地震動により上空でムチのように振り回され、室内の家具や什器が転倒・移動したり、エレベーターが故障したりすることは十分起こり得ます。ちなみに、台風でも上層階は結構揺れるそうです。

第2の理由は修繕の問題です。タワマン第1号は1976年に建てられた「与野ハウス」(さいたま市)ですが、2000年代になって建設が急増しました。タワマンは昨年11月時点で全国に1699棟(約45万戸)ありますが、築30年以上は142棟で1割弱、築20年以上は590棟で約3割に過ぎません。タワマンの「老い」、修繕の問題に本格的に向き合うのはこれからなんです。

20階以上、高さ60メートル超の超高層マンションでは、修繕は一筋縄ではいきません。タワマンの修繕にかかる費用は、通常のマンションよりも割高になります。例えば、外壁作業の際も足場ではなく上からゴンドラをつるすなど、特殊な技術が必要になります。高さ31㍍を超える建物に設置が義務づけられる非常用エレベーター、そのほか内廊下内の空調設備、免震装置などもお金がかかります。

新築マンションを業者が売り出す際、買い手がつきやすいように修繕積立金を低く設定し、段階的に引き上げることが多いそうです。修繕のための積立金が不足しそうな場合は、住民らからの徴収額を値上げする必要がありますが、住民は永住志向の人だけではありません。短期で転売を考えている人や実際には住んでいない所有者などもいて、合意形成を図るのは苦難の道のりです。

お金の問題だけではありません。現時点では過去の施工事例が参考にならないことが多く、修繕する業者側にも十分なノウハウが蓄積されていないと言います。「施工業者側の技術が成熟するのは、多くのタワマンが築30年を迎え、2回目の大規模修繕工事を終えたころにあたる、30年代後半以降になるだろう」との指摘もあるそうです。

桜町不動産
桜町不動産

永瀬は自分のことを「タワマンを愛し、タワマンに愛された男」などと言いますが、永瀬が再びタワマンに住める日は来るのでしょうか。昨今、都心のマンション価格はえげつないほど高騰しています。不動産経済研究所の発表によると、2025年、東京23区内の新築分譲マンションの平均価格(70平米換算)は1億3613万円に達したそうです。

今回、ドラマのモデルとなったのは武蔵小杉にあるタワマンのようですが、この物件も3年前に比べ何と40%も値上がりしているそうです。永瀬に残された道は、光友銀行の榎本の愛を受け入れ、「パワーカップル」を目指すしかないでしょう!?


最後までご覧いただき有難うございました。宮崎市・高千穂町の不動産のご相談は桜町不動産へ