第9話では、ミネルヴァ不動産の鵤社長の過去と登坂不動産の登坂社長の因縁が明らかになりました。鵤は幼い頃に両親に捨てられ、引き取った里親が地面師でした。鵤は父親から地上げや詐欺を学び、若い頃から詐欺組織の中心的役割を果たします。大手不動産会社も狙い、その件で辞職したのが登坂という因縁です。では、鵤はなぜ登坂を目の敵にするのでしょう?
地面師事件の主犯格だった父親は、潜伏先のフィリピンで逮捕され獄死します。警察に情報提供したのは登坂でした。鵤は父親の死を悲しみ、登坂を逆恨みしているのかと思いきや、そうではありません。鵤は父親に虐待を受けていて、自分が殺す予定だった父親を「登坂のせいで殺せなかった」と言うのです。あきれるほど理不尽な逆恨みで、登坂社長お気の毒様と言うしかありませんね。
それはさておき、第9話のメインはマンション購入希望のお客様をめぐる月下VS花澤の対決でした。定年を迎えた島村夫妻が息子夫婦と同居することになり、4LDKと広めのマンションを探します。条件は「リビングからドーンと富士山が見える」こと。二人は山梨と静岡の出身。アパートの隣の部屋に住んでいて、窓から同じように富士山を眺めていたのがきっかけで交際を始め、結婚したのでした。
夫妻は登坂不動産の月下に依頼したものの、ミネルヴァ不動産の花澤が横やりを入れます。いい物件があると島村を内見に連れ出し、月下が駆けつけたときは、すでに売買契約が交わされ350万円の手付金の支払いも終わっていました。月下は、その物件は近くでタワーマンションの建設が始まり、3年後には富士山が見えなくなることを島村に告げます。
月下はその事実を知っていたから夫妻に紹介しなかったのです。当然、花澤も知っていました。島村は花澤に「話が違うじゃないか!訴えてやる」と激怒しますが、花澤は日照権と異なり裁判で眺望権が認められることはほぼない、裁判は時間とお金の無駄、契約を解除する場合は買主都合のキャンセルなので手付金は返還できないと突っぱねます…
このような事例で宅建業者の責任は問われないのでしょうか。下は不動産を購入するときの流れ図です。「売買契約を結ぶ」の前に「重要事項説明」(重説)があります。これは宅地建物取引士(宅建士)がお客様に対して一定の重要事項を書面を交付して説明するもので、宅建業法35条で規定されています。書面を交付するだけでもOKの「契約」とは異なり、「重説」は必ず宅建士が説明しなければなりません。

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次のようなトラブル事例があります。
宅建業者Aは、売却しようとしているマンションの隣地に3階建ての建物が建つ計画があるのを知っていたのに、見学に来たBにマンションの眺望・採光・通風といった現在の環境の良さを告げ、隣地の建築計画のことは告げなかった。AがBに交付した重要事項説明書には「周辺環境は、建築物の建築、建替え、増改築等により将来変わる場合があること。また、本件建物の隣接地は第三者の所有地となっており、将来の土地利用又は建築計画に関して売主の権限の及ぶ範囲ではなく、一般的には都市計画法・建築基準法その他の法令等による制限の範囲に該当する建築物であれば建造が許可されるため、将来本物件の日照・眺望・通風・景観等の住環境に変化が生じ、現在と異なる近隣及び周辺環境になる場合があること」との記載があったが、AがBに隣地の建築計画を説明しなかったことは消費者契約法4条2項の不利益事実を故意に告げなかったものであるとして、Bからの契約の取り消しが認められた(東京地裁平成18年8月30日判決。ウエストロージャパン)。
消費者契約法4条2項は、事業者が消費者の利益になる事項を告げ、一方で不利益となる重要事項を故意に告知しなかった(不利益事実の不告知)場合、消費者が「不利益な事実は存在しない」として契約したのであれば、その契約を取り消せることを定めています。なお、宅建業法47条1項でも、重要な事項について故意に事実を告げない行為は禁止されています。
上のトラブル事例では、重説の書面に「第三者が所有する隣接地に3階建ての建物の建築計画(◯年◯月着工、×年×日竣工予定)があり、建物が竣工した場合は、本物件の日照・眺望・通風・景観等の住環境が大きく阻害されるおそれがあります。買主はこのことをご承知のうえお買い受けいただきます」などと、購入者が具体的な影響を理解し意思決定できるように記載し、説明するべきでした。
以前、病気や事件、事故などにより、その土地や建物内で入居者が亡くなった物件、いわゆる「事故物件」について取り上げましたが、これも故意に告知しなければ「不利益事実の不告知」にあたるでしょう。もちろん、不動産業者は周辺住民に聞き込みを行ったり、インターネットサイトを調査したりするなど、自発的な調査を行うところまでは求められていません。
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ドラマは、実は、花澤は息子さん夫婦の子育てのことを考えてそのマンションを勧めており、島村夫妻もそれを受け入れ、富士山の眺望は諦める決断をします。裁判にもならず、月下VS花澤の対決は花澤の完勝で終わりましたが、裁判になれば、花澤の行為は「不利益事実の不告知」として契約は取り消し、手付金は全額返還となる可能性があります。
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