ドラマ「正直不動産」で学ぶ10ー「地面師」は本当にいるの?

「正直不動産」で学ぶ
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第9話では「地面師」が登場しました。永瀬はある人物から土地の買い取りを打診されます。5億円を超える超大型案件で、転売すれば大きな儲けが出ます。しかし、この話はすべて地面師のワナで、手付金振込み当日に間一髪のところで事なきを得ました。また、登坂不動産の社長はかつて大手不動産会社で出世コースにいましたが、地面師に騙された責任を押し付けられて会社を辞めた過去も明らかになりました。

戦後の混乱期、バブル期、2010年代半ば、そして今も!?

「地面師」とは、土地の所有者になりすまして売却をもちかけ、多額の代金をだまし取る詐欺集団。多くは次のような役割分担があるようです。

  • グループをまとめ指示を出すリーダー
  • 詐欺対象とする土地を見つけ情報を収集する情報屋
  • 不動産仲介業者として所有者の代理人などを行う交渉役
  • 購入希望者との交渉や仲介に法務に関する仕事をする法律屋
  • 証明書や書類、印鑑などを偽造するニンベン師
  • 偽の土地所有者を演じる成りすまし役
  • 成りすまし役をスカウト・指導する手配師

かなり大所帯ですね。それぞれが徹底した調査と緻密な作戦をたて、周到な準備のもと、売買交渉へと臨みます。2024年にネットフリックスで配信されたドラマ「地面師たち」で「地面師」の言葉を知った方も多いでしょう。配信開始から話題となり、日本のTV番組TOP10で6週連続1位を記録しましたが、面白い、やばい、えぐい、怖いなどの感想と同時に「こんなこと本当にあるの」と思われたのではないでしょうか?

ハリソン山中ほどの狂気と残虐性を持ち合わせた人はいないでしょうが、確かに「地面師」はいました。役所や法務局が戦災で焼失し所有者不明の土地が多くあった戦後の混乱期や、不動産価格が上昇した1980年代のバブル期は、特に「地面師」が暗躍しました。そして、「地面師たち」のドラマも2017年に実際におこった事件をモデルにしたものです。当時もかなり大きく報道されましが、簡単にご紹介しましょう。

東京・五反田駅から徒歩3分という好立地に古い旅館がありました。土地が約600坪あり、大手住宅メーカーのS水ハウスが分譲マンション用地として購入を検討します。S水ハウスは土地所有者を名乗る高齢女性と契約を交わし代金63億円を支払いましたが、この女性が実は全くの他人。S水ハウスは巨額をだまし取られました。なお、同時期にA化成グループが正式な所有者から土地を取得し、跡地には高層マンションが建設されました。

この事件以降は大きな被害は報告されていませんでしたが、今年6月大阪ミナミを舞台に、地面師グループによる約14億円の詐欺事件が発覚しました。今年に入っても、同じく大阪で、地面師の疑いで司法書士らが逮捕される事件が起こりました。これから少子高齢化や人口減少が進めば、再び「地面師」が暗躍したり、新たな手口の不動産詐欺が増えたりするでしょう。

本人確認は宅建業者と司法書士のダブルチェックで!

しかし、S水ハウスのような大手がどうして騙されたのでしょう。原因の多くは「地面師たち」のドラマにも反映されていました。真の所有者からの内容証明郵便を妨害行為と思いこんでいたこと、社内の派閥争いで「社長案件」となりチェック体制が不十分だったことなどもそうです。しかし、一番の原因は本人確認が不十分で、売主の「なりすまし」を見抜けなかったことでしょう。

「本人確認」とは、売主あるいは買主が当事者本人かどうかを確認する作業です。公的証明書に記載の住所、氏名が登記事項証明書や印鑑証明書に記載されているものと相違ないか確認し、生年月日や干支を聞いたりします。ドラマでは、「どちらが○○様の自宅ですか?」と写真を選択させたり、「お買い物をされる近くのスーパーはどちらですか?」と、実際に住んでいないと答えられない質問をしたりする念の入れようでした。

一方で、本人がその行為をすることについての「意思確認」も必要です。「意思確認」とは、売買の当事者との面談を通じて売買契約の内容を理解しているか、売却の意思があるかなどを確認する作業です。高齢化社会が進み認知症問題が取り沙汰される中で、当事者に行為の意思があるかどうかを確認することは、取引のなかで大変重要なポイントになっています。

不動産取引を行う際は、犯罪収益移転防止法(犯収法)などで、宅建業者や司法書士には本人確認が義務付けられています。S水ハウスのときも、ドラマと同様、しっかり「本人確認」を行ったようです。それでは、一体どうすれば「なりすまし」を見抜くことができたのでしょう。実は、S水ハウスが被害にあう前に「なりすまし」を看破し、被害を免れた不動産業者がいました。その方法とは…

それは、不動産会社が地面師対策として通常実施する「知人による本人確認」です。これは、取引をしようとしている「なりすまし」の所有者の顔写真を近隣住民や知人に見せる方法で行います。この事件の真の所有者はその土地で生まれ育っているので、近隣住民で知らない者はいないほどでした。それにもかかわらず、S水ハウスはこれを怠ってしまいました。

しかし、法務局はどうやって詐欺を見抜くのでしょう。このときは申請書に添付された保険証のコピーが偽造だと分かったとされていますが、実は登記の申請前に真の所有者が不正登記防止申出(不正な登記がされる差し迫った危険がある場合にそれを防止する制度)をしていたのです。そこで、法務局はこの所有権移転登記の申請は疑わしいと見込んで審査し、保険証のコピーの確認もかなり厳重に行ったのでしょう。

さて、NHKはこのS水ハウスの事件を再取材し、「未解決事件」「File.03 地面師詐欺事件」として近々放送するようです(2025年10月)。

狡猾こうかつな詐欺グループと、見抜けなかった大企業」という単純な構図ではない、事件の新たな真相が浮かび上がってきた。

と番宣にありました。面白そうです。

桜町不動産
桜町不動産

S水ハウスの事件から間もなく10年。首都圏や地方のリゾート地や半導体関連企業進出エリアを中心に地価が高騰しています。新政権の積極財政を期待して株価も史上最高値を記録しました。数字だけ見れば35年前のバブルです。今ごろ地面師たちがどこかでうごめいているのかもしれません!?


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